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観光する前に浜松エピソードを知っておくと集中できます。

もう1人の姫

獅子神様

浜松市の戦国時代エピソード/獅子神様

静岡県浜松市の三ケ日に獅子神様という社がありました。 この社はいつからあったのか、どうしてあるか気になるのは地域住民だけでなく たまたま通りかかって目にした人も同じ気持ちでしょう。 1558年、それまで約200年もの長期間佐久城の城主を務めてきた浜名備前守 一族ですが、激しい戦国時代に徳川軍に攻撃されます。 今川義元が健在の頃とは違い他国から攻めやすくなったからで、今川義元と懇意 だった城主の浜名左衛門佐政遠は戦うべきか負けを認めて従うべきか悩みました。 「武士の誇りがあるので戦況を見て軽々と寝返ったりすることは出来ない」という 家臣もいれば、「桶狭間で今川義元が戦死して8年、今川家も代が変わっているし 新しい時代がやってきている」と軍議で申す者もおり、また近所の宇津山城や 堀川城も徳川家康と対立していることからみんなの意見はまとまりません。 どちらを選んでも正しいようで、みんなが納得する選択は難しかったのでしょう。 浜名左衛門佐政遠は人生最大の悩みに直面したのです。


決断の刻

家臣の意見がまとまらないまま徳川軍に攻撃される佐久城では、士気の低い兵士 がなんとか応戦することになります。 「守り抜くぞ!返り討ちにしてやる!」と決起して戦うのではなく、「降伏する ほうがいいんじゃないか?」「今は未定だけど明日には方針を換えて降伏するかも しれないな」と思いながらなので勝ちたいという気持ちはさほど持たない戦い、 やる気が出ない兵士が多かった一戦だと思われます。 なのでこっそり逃げ出す兵もおり、夜な夜な脱出する兵士が後を絶たずますます 不利な戦況へと傾いていきました。 このままでは城が落とされてしまう、そう直感した城主の浜名左衛門佐政遠はここで ついに大きな決断を下します、みんなには内緒で。 夜中に数名の部下を連れて、闇に紛れながら城からこっそり抜け出して逃げました。 城を捨て、戦場を放棄して脱出する作戦を採用したのです。


残されたお姫様

城主の浜名左衛門佐政遠は逃げ出しましたがお姫様は逃げずに戦うことを選びます。 しかしいくら勇猛な乙女でも男の戦人に敵うはずもなく敗れてしまいます。 斬られた首は無残にも浜名湖に投げ捨てられてしまいました。 姫の首は地蔵のあるほとりに流れて清左衛門という男に拾われ、それが姫だと 気付くと丁寧に箱に納められました。 その夜いつものように畑仕事を終えてぐっすり眠る清左衛門の夢にお姫様が出現し、 「私を獅子神として奉ってくれ。さすればそなたの家にいいことがあるぞ」 とお告げがあったそうで、清左衛門はその通りに行動することを決めます。 貴布弥神社の八合目に首を埋葬すると祠を作って獅子神様として夢の中で依頼 されたまま要求を聞き入れて奉りました。 その後清左衛門にどんな幸せが訪れたのかは知りませんが、夢の中に出てきたのが 本当にお姫様であったのならきっといくつかいいことがあったのでしょう。 もし清左衛門の子孫とお話しする機会があれは聞いてみたいですね。